初めての方へ
- 原状回復の基礎知識 -
「賃貸住宅の退去の際に、損耗等の補修や修繕費用を借主か貸主のどちらが負担するのか」といった原状回復をめぐるトラブルが問題になっています。その原因の一つとして、借主が契約内容をよく確認・理解しないまま契約を結んでしまうことがありますが、オーナー様においても今一度ご確認いただくことで、トラブルの事前回避にお役立ていただけると思います。
また、弊社としても共通の理解のもとにお仕事をさせていただくことが、スムーズで信頼関係の伴った末永いお付き合いをさせていただくポイントだと考えています。
- 民法や判例等に基づく基本的な考え方 -
[経年変化] 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等
[通常損耗] 借主の通常の使用により生ずる損耗等
■借主の故意・過失により生じた損耗等の回復費用は借主負担
借主の故意や過失により建物や設備を汚したり傷つけたりしたときは、特約がなくても、借主はその回復費用を負担しなければいけない。
■契約の中には、借主に経年変化や通常損耗の回復義務を負担させるような特約を定めたものがある。ただし、これが有効と認められるには、特約の内容が適正であり、明確な合意があることが必要
※判例(最判平成17年12月16日)では、このような特約の成立が認められるためには、少なくとも、借主が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されていることなど、その旨の特約が明確に合意されることが必要とされています。
- 補修・修繕費用の負担の考え方 -
(参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より)
(参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より)
補修・修繕等部位 | 考え方 | 負担区別 | ||
貸主 | 借主 | |||
床 (畳・フローリング・カーペット) |
畳の裏返し・表替え | 破損等はないが次の入居者確保のため行う場合 | ○ | - |
家具の設置によるへこみ、設置跡 | 家具保有台数の多い日本において、その設置は必然的なものである | ○ | - | |
飲み物等をこぼしたことによるシミやカビ | 飲み物等をこぼしたときに、すぐ拭き取る等の適当な処置をしなかった場合 | - | ○ | |
引越作業で生じた引っかきキズ | 借主の過失等に当たる場合が多い | - | ○ | |
変色、色落ち | 日照や建物構造欠陥による雨漏り等で生じた場合 | ○ | - | |
借主の不注意で雨が吹き込んだ為発生した場合 | - | ○ | ||
冷蔵庫下のサビ跡 | 拭き掃除で除去できる程度 | ○ | - | |
サビを放置し、床に汚損等が発生した場合 | - | ○ | ||
壁・天井(クロス) | たばこのヤニ | クリーニングで除去できる程度のもの | ○ | - |
クリーニングで除去できない程度のもの | - | ○ | ||
台所の油汚れ | 手入れが悪くススや油が付着している場合 | - | ○ | |
テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ) | テレビ、冷蔵庫は日常必需品であり、通常の使用の範囲と考える | ○ | - | |
結露の放置により拡大したカビ、シミ、腐食 | 結露が生じた場合、これを拭き取る等の手入れが借主に求められる | - | ○ | |
壁等の画鋲やピン等の穴 | 下地ボードの張替えが不要な程度 | ○ | - | |
壁等のくぎ穴、ネジ穴 | 下地ボードの張替えが不要な程度 | - | ○ | |
賃借人エアコン設置による壁のビス穴、跡 | エアコンは日常必需品であり、通常の使用範囲と考えられる | ○ | - | |
建具 | 網戸の張替え | 破損等はないが次の入居者確保のため行う場合 | ○ | - |
ペットによる柱等のキズ | ペット飼育は未だ一般的ではなく、ペットの躾の問題でもある | - | ○ | |
設備・その他 | 専門業者による全体のハウスクリーニング | 借主が通常の掃除をしている場合は、次の入居者確保のためと考えられる | ○ | - |
台所、トイレ等の消毒 | 賃借人の管理の範囲を超えている場合 | ○ | - | |
浴槽、風呂釜等の取替え | 破損等はないが次の入居者確保のため行う場合 | ○ | - | |
鍵の取替え(破損、紛失のない場合) | 入居者交代に伴う管理上の問題である | ○ | - | |
風呂等の水垢、カビ等ガスコンロ置き場の換気扇などの油汚れ、スス | 使用期間中、清掃・手入れを 怠ったため生じた場合 | - | ○ |
